恋の治療は腕の中で
帰る時にはもう夕方になっていた。


「よし、何処かで旨いもの食べて帰ろう。」


「うん。」

悠文は、私をメキシコ料理のお店に連れてきてくれた。

正直気分じゃないかも。なんて思ってたんだけど、食事をしていたらギターやマラカスを持った人達が陽気な歌を歌いながら私達のテーブルにやって来て、
踊りましょう!
と半ば無理やり私の手をとりダンスをさせられた。

悠文は、落ち込んでいた私を気遣ってこのお店を選んでくれたんだ。そんな悠文の気持ちが嬉しくて胸が熱くなる。


その晩悠文は、ずっと私が眠りにつくまで優しく抱き締めながら背中を撫でてくれた。

悠文の胸から聞こえる規則的な鼓動がまるで子守唄のようで私は夢の中へとゆっくり落ちていった。


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