恋の治療は腕の中で
結局悠文と一緒にマンションに帰ってきてしまった。

「ほらっ、入って。」


入るのを躊躇していると後ろから背中を押されて家に入った。


家を出る時はまさかこんなふうに帰ってくるとは思いもしなかった。


扉が閉まると後ろから抱き締められた。


「心配したよ。紗和がなかなか帰ってこないから。もうこのまま帰ってこないんじゃないかと思って。」


「はい。そのつもりでした。」

私は消え入りそうな声で答えた。


「ほんと、ごめん。

でも話しを聞いてくれ。」


「話し?悠文に実はフィアンセがいたことですか?そのフィアンセとキスをしたことですか?何を今さら。診察室で何も言ってくれなかったじゃない。」

あの時のことを思い出し自分が麗香さんに嫉妬をしていることに気がついた。今さら気付くなんて、私は悠文を愛してる。一人で生きていくって決めてから誰のことも好きになったりしなかったのに。


「ごめん。…………」

今度は悠文が消え入りそうな声になった。



こんな悠文の声は聞いたことがない。



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