恋の治療は腕の中で
「じゃあ、何も紗和が気にやむことないんじゃないの。だって藤堂先生は麗香さんとは親が勝手に決めた許嫁だって言ってたんだし。
紗和のことは、藤堂先生から婚約しようって言って。くれたんだから。」

「それは、そうなのかもしれないんだけど……。」


「なに?まだ何かあるの?」

「前に医院長のアシから悠文のアシに変わる時医院長にフランス料理をご馳走してくれたらって条件でOKしたんだけど、そのお店で医院長に

「自分が引退したら悠文と私にこの医院を継いで貰いたい。」

って言われたの。その時悠文のこと良く思ってなかったから、藤堂先生のこと知らないのに一緒にやっていくなんて出来ない。みたいなことを言ったから、医院長があの歓迎会をやることにしたんだ。」

「それでまんまと医院長の策略にはまった訳。」


「たぶん。……。」

「でも、藤堂先生は医院長にそんなこと吹き込まれたからって素直に従うとは思えないけど?」

「そうだけど、タイミングが良すぎるような……。」

「まぁー、確かにその状況なら私でも疑うかも。

それで、藤堂先生から婚約するにあたって愛の告白はあったんでしょ?」


「いや、それが……。」

「なに?何も言われてないの?」



「だから、好きでもない私と医院長命令で婚約したんじゃないかって。

……。」

自分で言って情けなくなってきた。

「紗和の気持ちはどうなの?

やっぱり好きでもない藤堂先生と婚約したの?」


好きでもないのに藤堂先生と婚約?


「違う違う!

そりゃー、知り合った時はこの人最低とか思ったけど一緒に仕事するようになって本当は優しい人で患者さん思いの人なんだって分かったし、一緒に住むようになったら、私のこと凄く分かってくれてて、自分に甘えていいんだって言ってくれて…………。」


あー、やっぱり私悠文が好きなんだなぁー。


「藤堂先生の事好きなんだね。」


「うん。」

< 70 / 163 >

この作品をシェア

pagetop