3日限りのルームシェア
あの時・・・久しぶりに会った樹は、新郎新婦に負けず劣らず目立っていた。
結婚式で樹を初めて見た女性たちは樹に釘づけだった事も憶えてる。
挨拶したい、久しぶりに話をしたい。そう思ったけど
樹の周りには常に人だかりができていて話すチャンスはなかった。
「俺ってさ・・・知香ちゃんの制服姿しか見たことなかったから・・・
それが久しぶりに会った君は素敵なドレスを着て俺の前に現れた。
もう、今しかない!って思ったんだよ・・・・
だけどさ・・・・1週間後に海外赴任が決まっててさ・・・結局言えなかったんだ。」
「樹さん・・・・」
「本当に情けないだろ?ヘタレなのか運がないのか・・・・」
「私いいましたよね。誰もがみんな完璧じゃないですよ。
少しくらい不器用なくらいがかわいいって・・・」
樹が顔を覆っていた手を離して知香を見る。
「正直、樹さんってすごく女たらしなんだって・・・
昨日まで思ってました」
「女ったらしって…」
「あ!ごめんなさい。・・・勝手に思ってしまってたんです。」
そう勘違いさせたのは自分だと言う事を樹はわかっているから
何も言えないでいた。
「でもこんなに一途でかわいい人だって思ったら何か凄く凄く気になって・・・」
「知香ちゃん?」
「樹さんといるのが凄く楽しくてずっと一緒にいたいって思う自分がいたり・・
樹さんが雪音さんと仲良く話してるのを見てたら
なんかおもしろくなかったり・・・」
「知香ちゃん・・・それってもしかして」
知香はそれ以上言えず顔を真っ赤にしながら下を向いていた。
「樹さんが私を思ってくれた時間に比べると、私の思いって
もしかしたらちっぽけなんじゃないかって・・・
思うんだけど…でも私は樹さんに好きだったって言われて
今、すごくすごくうれしいんです。」
そう言った途端、樹は知香を抱きしめていた。
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