あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
木についてから、辺りを見渡すと、城は簡単に見つかった。
しばらくすると、黒いレンガのお城が見えてきて、あたしは無事、帰還することができた。
無事、城についたと安堵していると……。
「あー、もうダメだ……」
城についてすぐ箒から人間の姿に変幻したシュガーは、しばらく経つと猫の姿になってしまった。
相当疲れたらしい。
あんなすごいことやったもんね。
普通なら、術者が使い魔に魔力を送らないと、変身できないから、あれだけの魔力を保有しているシュガーはやっぱりすごいんだ。
シュガーはもうムリ~と、廊下にへたり込んでしまった。
そのままにしておいても、仕方ないので、あたしが今抱っこしている。
シュガーあったかいし、気持ちいい。
入り口で出迎えてくれたクコは、夕食まで時間があるため、休んでいていいと言ってくれた。
シュガーも寝てしまったことだし、一旦部屋に戻ろうかな。
腕の中のシュガーを抱き直して、部屋のある塔に繋がる階段を上る。
「帰ってきたか」
部屋に向かって歩いていると、腕を組んで壁にもたれかかるようにしてカカオがこちらを見ていた。
どうやらあたしを待っていたらしい。
帰ってきたか、ってあたしを放っておいていう台詞?
魔力の使い方もわからず、この国に来てまだ2日目で右も左もわからない状態なのに。
文句ばかりが脳裏に浮かぶけれど、何故か口にすることは憚られて、唇の内側を軽く噛んだ。
「すまない。 少し君を……試した」
組んでいた腕を下ろし、こちらに向かって歩いて来た彼は反省の意を示しているようだ。
「試した、って……」
「本当に魔女なのか、未だ疑心暗鬼なんだ。 黒猫を使い魔としても、従えることができないようなら本物とは言えないからな」
彼の碧の瞳は、嘘をついていないようだった。
この国を守るため、召喚されたあたし。
そのあたしがこの国の唯一の救いで、戦争をしているこの国は切迫されている。
全てに疑いかかっても仕方のないことで、それだけ苦しい状況なのだ。
「疑うのはしょうがないとして……それでもレディを見知らぬ土地に放っておくのはジェントルマンとしてないんじゃないのかしら?」
仕返しを試みてお上品な言葉遣いを意識し、嫌味を込めて言い放つと、カカオの柳眉がぴくりと跳ね上がった。
「すまなかったと、思っている……」
「……反省してるの?」
「ああ。 粗雑な扱いを許してほしい」
そういったカカオは首を垂れる。
どうやらきちんと反省しているようだ。
「ならいいんだけ」
ど、と最後まで言葉を紡ぐことができなかった。
彼があたしの手のひらを優しく包み込んだかと思うと、そのまま己の唇をやんわりと落としたのだ。
なにするの、と言葉を紡ごうとしたものの、思いのほか驚いていたようで言葉が出てこない。