ハコイリムスメ。

「うまい!」

「ほんとに?さっちゃんは?」

「おいしいわよ」


俺達の言葉に、葵は嬉しそうに頬を染めた。よかったあ、と安堵の言葉をこぼす。

いつか、俺が作ったあのオムライスによく似ていた。黄色いものに惹かれた彼女を思い出す。




そういえば「葵」の名前のもとになったあの黄色い花も、すっかりかれて、たくさんの種ができたんだ。

来年も、再来年も、その先にも、咲かせて見せる。




「何時に迎えにくるの?」

「10時」


さっちゃんの問に最後のひとくちを食べながら答える。




葵の部屋は、すっかり片付いてしまった。絵も、服も、施設の部屋に送ってしまったから。

最初からあったベッドと机と本棚だけが残されている。




「10時?あら、あと1時間もないの!」

「支度は終わってるから」

「じゃ、写真撮りましょうよ!せっかくだし」


さっちゃんが食べ終わった皿をシンクに置いて言った。

俺も賛成だった。


「カメラ!あるでしょうちとせ」

「あいよ」


< 443 / 465 >

この作品をシェア

pagetop