ハコイリムスメ。


修学旅行に持って行こうと、中3の春にじいちゃんに買ってもらったカメラを持ってきた。
長いこと使っていなかったせいで、カメラにはうっすらとほこりが積もっていて、俺は申し訳ない気持で心が痛かった。


ああ、もっとたくさん写真を撮っておけばよかった。

こんなに早く別れの日が来るだなんて、思っていなかったから。


「セルフタイマー機能付いてるの?」

「ついてるついてる」


操作方法をすっかり忘れてしまっていたのでちょっと苦労したけど、無事に3人並んで写真を撮った。


「いやー!私、クマがひどいじゃない!」

「寝不足なんじゃないの」


カメラを適当に操作しながら俺があいまいに言うや否や、彼女はあとでもう一回寝るわよと言った。


「仕事は?」

「今日は非番なの!そんなことより、あんたたち2人取ってあげるから、並びなさいよ」


さっちゃんに言われるがまま、俺と葵は壁際に並んで立った。


「とるわよー」


一瞬後、シャッター音がして、撮れたと彼女は言った。


「葵、これ今プリントするから」

「ぷりんと?」

「あー、印刷。ちょっと待ってな」


プリンターにデジカメを接続して、3人で撮ったものと2人で撮ったものとを印刷した。


「すごーい!魔法の箱だね!」


手渡された写真をまじまじと見つめながら葵はそう言って笑った。
大事にするね、と俺たちに言った。


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