清掃員と経営者

ランチセットのコースは思いの外リーズナブルで瑠美は安心した。


「ところで、瑠美ちゃんって前どんな仕事してたの?」


「あ…。保険会社の事務的な感じでした。」


かなえに尋ねられ、焼きたてパンに舌鼓しながら答える。


「そっかー。事務から清掃員って仕事が全然違うから大変でしょ?」

「うーん…。正直清掃の仕事だとは思わなかったので…。でも今は楽しいです、体を動かしながらビルも綺麗になって。」


美味しいランチを食べながら瑠美はつい素直に話してしまった。


「そうなのよ。汚れてる場所が綺麗になるって結構快感でしょ?ふふふ。」


かなえがメインディッシュのソースにパンをつけて口に放り込んだ。


「でも清掃の仕事は床やトイレ清掃だけじゃないのよ。」


かなえが2人を見ながら続ける。


「汚れには色んな種類があって泥や埃なら雑巾で拭えるわよね。でも大きな会社に居ると目に見えない汚れもあるの。」

「目に見えない汚れ…?」


茜と瑠美は見合って頭を傾げた。
かなえは意味深なセリフを吐いたかと思いきや、ニコッと笑い


「さぁ!デザートデザート!」


さっきまでのシリアスな雰囲気は無かったかのようにデザートプレートを平らげ始めてた。そして再びその手をとめて、


「あぁ、午後2人には清掃主任に会って貰うからそのつもりでね。あー美味しかった、ご馳走様。」


紙ナプキンで口元を拭きながら上品に食事を終わらせてた。
それを見て茜と瑠美もデザートを慌てて食べ始めた。
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