清掃員と経営者

「……さま。………く様。」

「とりあえず………部屋……しろ。」


瑠美の体がフワリとする。
遠くに誰かの声がする。とても耳障りが良くその声に耳を傾けながら落ちていった。


***************


頭痛で目覚める。寝不足と深酒で沈んだ体を起こしながら目を開けると、ホテルの部屋にいた。


「あれ?どこココ…?」


瑠美の独り言が小さく部屋に響く。
洋服は着たまま少し皺になり、化粧も落とさず眠ったらしい。

ベッドのサイドテーブルに小さなメモがある。

《起きたらフロントに連絡しろ》

メモを見ながら昨夜の事を思い出そうとした。最初は軽めのカクテルを飲んで、色々考えながらハイボールをおかわりして、ナッツを食べながら…

記憶はそこで止まる。


「あのスーツの人…。でも断ったし…」


フワリと浮かぶ感覚を思い出すが、誰に担がれたのか記憶が曖昧だ。
もう一度メモを見て、フロントに連絡してみた。


「フロントでございます。」

「あのー……」

「お目覚めでございますね。チェックアウトは10時でございます、お支払いは済んでおりますのでお帰りの際フロントへお声を掛けて下さい。」


特に何も話す事なく電話は切れた。
時計を見ると時刻は8時半過ぎ。とにかく身支度を整えフロントに向かった。
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