血の記憶
「翔真、ちょっと手……」
言えば離してくれる。
そう考えた私が甘かった。
「ちょ、翔真」
なぜか前へと進む度強まる手の力。
「……痛いから」
「あ、ごめん」
力は緩めてくれたものの手は離そうとしない。
「今だけ繋いでていい?情けないけど……怖くて震えそうなんだ」
そして繋いでない方の手を私に向ける。
その手はカタカタ震えていた。
「私がいるから大丈夫」
安心して欲しくて握っている手に力を込めた。
そんな私に少し驚いたような顔をし、フッと笑った。
「ありがとう、奈央はかっこいいな…、俺はかっこ悪いけど」
ホームに向かう途中でボソッと呟いた翔真。
「そんなことない」
翔真はかっこいいよ。
私がかっこいい?
そんなことない、私はあの町から逃げたんだ。
幸せだった思い出から
あいつから逃げるように。