君が嫌いで…好きでした
ボールを持った東は何も言わないままゴールの手前で止まった
そしてゴールに向かってボールを投げたんだけどまたそれが思った以上に下手くそでゴールに全く届かなかった
千菜「入らない…」
湊「いやいや…入らない前にほとんどゴールに届いてないじゃん。バスケしたことねぇの?」
千菜「…小学校の時に少しだけ」
湊「今は?体育でもやるだろ」
千菜「チームプレイは入れてもらえないから…」
あぁ…そうゆうことか…
それにしても低レベル過ぎだろ
湊「しょうがねぇな…ほら教えてやるらちゃんと聞けよ」
俺は東の後ろにつきアドバイスした
湊「ほら右手はここ、左手はこっち。
んでさっきのシュート見たけどお前は押し出す力が弱すぎ。お前の場合もう思いっきりやっていい。ゴールに入るように思いきり手でボールを押し出せ」
そして東はもう一度ボールを投げた
そのボールはゴールに近づいたが枠に当たって床に落ちた
湊「いいじゃん。後は少し調節すれば入るはずだろ」
三度目の正直…東がボールを投げたした瞬間、入れと強く願った
そのボールは見事な曲線を描いて枠に当たって何とかゴールを決めた
千菜「入った…」
湊「やるじゃん!意外と才能あるかもしんないな♪」
東がゴールを決めたことが自分の事のように嬉しく感じた
実際本人より喜んでいた気がする
東のリヤクションが薄すぎて
千菜「………………」
湊「なんだよ。人の顔じっと見て…」
千菜「…やっぱり湊も笑ってる方がいいよ」
東は突然そんな事を言い出した
その東の微かな微笑みに胸が締め付けられるような気分になった
気がつくと体が動いて持っていたボールを手離し東の事を抱き締めていた
誰も居ない昼休みの体育館
落ちたボールが弾む音が鮮明に聞こえて徐々に小さくなり静かな空間になった
かながあぁ言った以上もうかなの事は構ってられねぇ
俺のしたいようにする
かな、俺はお前から東を奪う
千菜「……湊…?」
―――――――教室
奏叶「千菜お待たせ…千菜?」
教室に戻ると千菜の姿がなかった
「あ、奏叶。東さんなら何処かに行ったみたいだけど」
奏叶「千菜が?そっか、ありがとう」
千菜…何だか胸騒ぎがする…
―――俺の腕の中に東が居る
女を抱き締めるなんて初めてじゃないのにこいつには何故かドキドキさせられてしまう
千菜「ねぇ湊…?どうしたの…」
湊「…俺は最初お前が嫌いだった。でもお前と一緒に居るようになって段々…お前の事気になるようになった。東……いや、千菜。俺はお前の事が好きだ
もちろんお前がかなの事を思ってることも、お前に酷いこともしてきたのは分かってる」
千菜「湊…」
湊「都合がいいのは分かってる。でも俺はかなと険悪になってもかなからお前を奪いたい
………返事は今すぐじゃなくていい
でも俺は本気だから。それだけは覚えてろよ」
俺は抱き締めていた手をそっと離した
千菜は何も言わずただうつむいていた
そんな千菜を1人体育館に残して俺は先に教室に戻った
あいつを困らせてるのは分かってる
でもあれが俺の正直な気持ちだ
すぐには無理でも絶対振り向かせて見せる
かな、後悔しても知らないからな
千菜「――――…湊…奏叶…」