君が嫌いで…好きでした
美術の授業中、使っていた彫刻刀で私は誤って自分の手を切ってしまった
切れた所からじわじわと血が出てくる
千菜「痛……」
奏叶「千菜どうしたの…って指切ったの!?」
隣に座っていた奏叶が私の傷を見てすぐにティッシュで止血して立ち上がると…
奏叶「慎ちゃん!(先生)保健室行ってくる!」
先生「先生って呼べって何回も言ってるだろ七瀬!」
女子「先生もう居ませんよ」
湊「…お節介な奴」
女子「湊何か言った?」
湊「別に」
怪我している本人より慌てて保健室に向かう奏叶
心配してくれてるんだろうけど…少し大袈裟な気が…血は出たけどそんな大きな怪我じゃなかったけど…
そうこう考えてるうちに保健室に着いた
ガラッ…
先生「あら、どうしたの?」
奏叶「彫刻刀で指切ったんです!」
先生「見せてみて」
先生は私の傷口をじっと見るとすぐに微笑んだ
先生「大丈夫。血は結構出たみたいだけど傷口は小さいしすぐ治るわ。念の為消毒と手当てしましょう」
先生はさが手際よく手当てをしてくれると奏叶もようやく安心した様子
奏叶「良かった…」
千菜「…奏叶心配しすぎだよ」
奏叶「そりゃ心配するよ。千菜の事だから」
またそうやって恥ずかしい事を笑って言う…
先生「そういえば貴女前もここに来た子よね。クラスと名前は?私まだ来たばかりで皆の名前が分からないの」
優しそうな笑顔で話しかけてくれるその先生に私も何となく気が緩んだ
千菜「…3年2組…東千菜です…」
自己紹介するとその先生は驚いたように私を見た
先生「もしかして貴女が千菜ちゃん!?やだ、話に聞いてたけど凄く可愛いじゃない!」
千菜「あ、あの…?」
私の事を知ってる…?
それに話に聞いてたって一体誰から…
先生「あぁごめんなさい。つい盛り上がちゃった…私、鈴村 紗香(すずむら さやか)!
高梨凜の彼女よ」
千菜「え…」
奏叶「高梨凜ってあの時の!?彼女居たんだ…」
凜ちゃんの彼女…?
鈴木「千菜ちゃんの事は凜と楓から色々聞いてて1回会ってみたかったの。…楓の事は私も凄く残念だった…それに千菜ちゃん変な噂があるんでしょ?
でも私はそんなの気にしない!噂なんて根拠のない下らないものだしそれに私は千菜ちゃんの事好きだな」
明るくて友好的な鈴村先生
その真っ直ぐな笑顔と言葉に私は何処か安心できた
鈴村「一緒にいる君は千菜ちゃんの彼氏?」
奏叶「はい。同じクラスの七瀬奏叶です。」
鈴村「奏叶くんね。さっきはあんなに慌てちゃってよっぽど千菜ちゃんの事が大切なのね。青春ねぇ」
鈴村がそう言うと奏叶は少し顔を赤らめて言葉を詰まらせていた
鈴村「千菜ちゃん。私は千菜ちゃんの味方だからね!いつでも保健室においで!なんならサボってもいいから♪」
奏叶「それ先生が言うことじゃないですね」
鈴村「いいのよ。サボりもまたその青春だから♪」
奏叶「何ですかそれ。鈴村先生って面白いですね」
ケラケラ笑う奏叶と鈴村先生
何だか穏やかに思えた
鈴村先生がさっき言ってくれた言葉…凄く嬉しい…
伊藤先生みたいな先生が居てくれた事が私は凄く安心できた嬉しかった
千菜「鈴村先生、手当てありがとうございました…これから…よろしくお願いします」
鈴村「こちらこそ!でも怪我には気を付けるのよ。奏叶くん、千菜ちゃんの事しっかり守ってあげるのよ」
奏叶「もちろんです」
私に笑いかけてくれる人がこんなに居てくれたんだ…でもきっと奏叶と出会ってなかったら全く違う未来になっていたんだろうな
1人ぼっちの暗くて悲しい未来が…
今の私が居るのは奏叶のお陰なんだな…
千菜「奏叶ありがとう…」
奏叶「ん?どういたしまして」
きっと奏叶はその本当のありがとうの意味を知らないんだろうけどそれでいい
千菜「鈴村先生の事湊にも教えてあげたいな…」
奏叶「うん。ビックリしそうだな」
授業中の静かな廊下を奏叶と話ながら歩いた