星に願いを


「お!なんだ、結局屋根裏部屋使うのか」



扉が開く音がして、次に響いたのはおとんの声。



「はい。鈴子さんが部屋を譲ってくれたんで」



だ れ だ ! お ま え !

何が鈴子さんよ!何が譲ってくれたんで!よ!!
さっきまであたしの名前を軽々しく呼び捨てで連呼してた癖に!譲ったんじゃなくて強奪したくせに!



「そうか!鈴子にも親切という心があったんだな!」



少しは娘を疑え!馬鹿オヤジめ!自身の娘に優しさなんてこれっぽちもないって分かってるでしょーが!なんて。

なんで口答え出来ないかって!?さっきからおとんの視線が外れる度にアイツが恐ろしい目であたしを睨むからよ!




「あ、鈴子さん。バケツの水変えてきますよ」

「さすが亮くん!手伝ってるなんて、くぅ~っ!涙がでるな!な!鈴子!」




涙がでる!?馬鹿いえ!今まで手伝うの“て”さえなかったわ!1時間悶々と一人で掃除するあたしに対して、罵倒を浴びせ続けてたのに!…と、思いつつバケツを差し出すあたしは完全に飲まれているに違いない。



「じゃ僕、水変えてきますね」

「父さんもそろそろ雀荘に行くかな」



は、馬鹿オヤジめ。今日は雀荘は休みだ。家族でハワイ旅行行くって雀荘のおっさんが言ってたもん。行って肩を落として帰って来るがいいさ。




二人が出て行ってパタンと閉まったドアを見ると、下の部屋に梯子を使って降りた。

ふう、と腰を下ろし辺りを見回す。目に止まったのは先程まで屋根裏部屋にあった一つの小さい段ボール箱。もっと物があると思った屋根裏部屋には、このひとつしかなくて少し驚いた。


それに手を伸ばして、張られていたガムテープを剥がし開く。




「なになに、っと…ありゃ?」


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