星に願いを


「ってゆーかアタシの部屋に入らないっていう約束は!?」

「守ります、なんてゆうてへんし」



あと10分でHR開始のチャイムが鳴るにも関わらずアタシと奴は未だ家の前。

家から学校までは、徒歩約20分。自転車でかっ飛ばせばその3/1。つまり、憧れの岡田先生の授業には間に合う計算だ。




「じゃ、あんたはちんたら歩く事ね」





あたしはマイチャリに乗って行くわ、と自転車に股がる。ははん、なんていい気分なのかしら。



「って、重っ!」



なんて思ったのも束の間。後ろの荷台に重みを感じて慌てて振り返ると、そこには悪魔の笑みを浮かべた奴。



「はよ漕げ。」

「は!意味わかんないし!」



本当に意味わかんない!何でアタシがあんたを後ろに乗っけて自転車こがなきゃなんないのよ。




「ええの?岡田センセの授業遅れてまうで。」

「それはいーやー!!」




岡田先生の授業だけ無遅刻無欠席記録更新中なんだから!

それまでもコイツにペース崩されるなんてたまったもんじゃない。

あたしはもう一度振り返って奴を睨み付ける。




「今日だけだからね!」




そして、グッとペダルに力を込めて家の前に続く坂道を掛け降りた。


シャーという車輪の軽快な音とは裏腹なあたしの心。


この男、いつか絶対殺してやる。



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