小さなキミと
*


後期終業式を間近に控えたその日、興奮冷めあらぬ様子の田辺が教室に駆け込んで来た。


『見て!』


渡された紙切れには、丸っこい字が並んでいた。



田辺くんへ。

好きです、私と付き合ってください。


紙の端に、小さな字で例の彼女の名前があった。



『すっげーじゃん! よかったなぁ!』


服部は素直に祝福した。


当時はまだ、服部は人の恋路に相応の興味を持ち合わせていたのだった。


それが親友となれば、尚更だった。


服部は、彼女からの手紙のその文章に、何の違和感も感じなかった。


『オレが先に言いたかったな』


言いつつ田辺は、照れくさそうに笑っていた。


*


それから1週間と待たずに終業式が訪れ、ほぼ同時に田辺と彼女の付き合いも終わった。



それはあまりにも唐突で、あまりにも早すぎる展開だった。


昨夜彼女から、メールで別れたいと告げられた。

それで自分もその申し出に応じた。


田辺が服部に語ったのは、これだけだった。


『何でアッサリ応じるんだよ、ずっと好きだったんじゃなかったのかよ。
理由は、つーかまだ1週間も経ってないのに!』


服部が何を言っても、田辺は詳細を教えようとはしなかった。


『あの子は最初から、オレの事好きじゃなかったんだよ』


そんなはずはない、だって告白をしてきたのは向こうじゃないか。


朝礼のチャイムが鳴ったので、それは言えなかった。


*


式が終わって解散になったとき、

例の彼女がどこか思いつめた様子で、なぜか服部の席へやって来た。


チラリと田辺を見やると、確かに目が合って、逸らされた。


『……田辺っ』


声は聞こえたはずなのに、田辺はサッサと教室を出て行った。

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