小さなキミと
『田辺くんの事で話があって、今からちょっといいかな』


そう言うわりには、彼女は田辺の方を見ようともしなかった。


正直服部は、誰であろうと女子とサシで話すのは嫌だった。


だけど、田辺とのことにどうしても納得がいかないという思いもあった。


仕方なく、服部は彼女に付いて行くことを選んだ。


後から考えたら、彼女の言動は変だった。


田辺のことを、服部に話す必要性がどこにある。





彼女は屋上へ続く階段を上って、人気のない踊り場で足を止めた。


『私と田辺くんが別れたって、服部くんならもう知ってるよね?』


何だかイラっとくる言い方だったが、

早く終わらせるためと割り切って、服部は素直に頷いた。


『あのね、私田辺くんに酷いことしちゃったの謝りたくって』


だったら直接謝れよ。

つーか謝るくらいなら最初から告白とかしてんじゃねーよ。


服部は女子に暴言を吐く習慣がなかったので、それは声には出なかった。


が、顔には出たらしく、彼女は慌てて言葉を補(おぎな)った。


『もちろん虫のいい話だって分かってるし、謝って済む問題じゃないよね。でも……』



一呼吸おいて、言い訳を始めた。


『あたし本当は田辺くんに告白なんかしたくなかった!
でもナナちゃんとユウコがっ、田辺くんなら絶対大丈夫だからって、でもあたしやっぱり本当はっ』


待て待て待て、どういうことだよ。

告白したくなかったって、なんだそりゃ。

しかも何か、思いっきり人のせいにしてないかコイツ。


服部はますます怪訝になり、彼女は彼女で目にうっすらと涙を浮かべていた。


『本当は服部くんのことが好きなのっ』


意味を理解した途端、服部は頭をぶん殴られた気分になった。

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