小さなキミと
一瞬、頭の中が真っ白になった。


声も出なかった。信じられなかった。


まさか服部からそれを言われるなんて。


夢かもしれないと疑ったけど、あたしは生まれてこの方、夢の中で『これは夢?』などと思ったことは1度もない。


なので、疑う時点で夢ではないのだ。


「嘘……」


「こんな嘘つかない」


いつもみたいに噛みついてこないところが、服部の本気を証明していた。



そっか……。


あたし、素直に喜んでいいんだ。



そっかそっか、そっか。


服部、あたしを好きって言った。



そっかーーーー。


あたし、服部に好かれてたのかぁーーーー。



「ハァッ?」


怪訝な声と共に、身体の支えが離れたのを感じた。


「何で、お前……泣いてんの」


「泣いてないーーーー」


強がりから出たあたしの台詞は、ちょっとどころかかなり無理があった。


自分の目からこぼれているのはどう考えても涙だし、豪快に鼻水をすすっておいて今さら誤魔化しが効く訳がない。


「どう見ても泣いてんじゃんよー」


あたしの心情を図りかねたのか、服部は微妙に固い表情でポケットティッシュをくれた。


あたし自身も、なぜ涙が出るのか分からなかった。


ただただ嬉しかった。それだけだった。


ちゃんと伝えないと服部が誤解する。


それが分かっていたので余計にテンパってしまい、涙はしばらく止まらなかった。

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