小さなキミと
「剛、ちょっと話があんだけど」


突如(とつじょ)頭上に落とされた、少し苛立ったような男子の声。

あたしの心臓は正直で、その声を聞いた途端、ドキッと大げさに音を立てた。


そろりと顔を上げて見ると、やっぱり声の主は予想どうりで。

少し砂で汚れた体操着を身にまとった服部が、あたしの正面に立っていた。


服部と顔を合わせるのは朝礼以来だ。


午前中は何やかんやで忙しく、男子のバレーを見る暇なんてなかったから。


本当は見たくてたまらなかった。

だけど先輩に体(てい)よく審判を押し付けられたせいで、あたしの自由時間はゼロだったのだ。


えっ。

は、はなし?

なに、あたし何かしでかした?


服部の不機嫌そうな顔から想像するに、楽しい話ではなさそうだ。

あたしはひとまずおにぎりを置き、口の中のものをゴクリと飲み込んだ。


「えっと……なんでしょう」


恐る恐る、服部に問いかける。


「いや、ここじゃちょっと」


服部は辺りを窺(うかが)う仕草をした。


えっと、それって。

人に聞かれるとマズイってこと?


ビビって何も言えないでいるあたしに、隣の結がコソッと耳打ちする。


「行ってきなよ。告白かもよ?」


ギョッとして結を見ると、彼女はニヤニヤと意地悪な含み笑いを浮かべていた。

服部はというと、これでもかというほど眉間にしわを寄せている。


……なんだよその顔、ムカつくなぁ!

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