小さなキミと
「話があるならここで聞くっ」


怒るように言ったあたしに、服部は呆れた声を出した。


「あのねぇ……怒りたいのはこっちだから。いいから来いっ」


言うが早いか強い力で腕を引かれ、あたしは強引に教室から連れ出される羽目になった。


「え、あの、ちょっと」


戸惑うあたしを見向きもせずに、

服部はあたしの手首を掴んだまま、体操着姿の生徒が行き交う廊下をずんずん進んだ。


わ、みんなこっち見てる。

服部! あたしたち見られてるけど!


心の中で大声で叫んでみるけど、当然服部の耳には届かない。


ふわっと風になびく、ちょっぴり長めの黒い髪。

雑に捲られた袖から伸びる、骨ばった腕と大きな手。

小さめだけど、よく見ると筋肉質で逞(たくま)しい背中。


そんな服部の後ろ姿に思わず見とれ、同時に胸が苦しくなった。


ダメダメダメ、服部はダメなんだって。

そう自分に言い聞かせてみるものの、不可抗力でドキドキしてしまうのは止められない。


実を言うと、あたしはもう服部のことを、ただの友達だとは思えなくなっていた。

いつだって、服部はしっかり男に見えるし、面と向かうと緊張する。


あたしの冗談に笑ってくれたりすると、嬉しくて胸が躍る。

手を繋いだり……キスしたりもしてみたいって思う。


だけど服部には、こんな気持ちは絶対に知られるわけにはいかない。


知られたら最後、服部との友情関係は終わる。

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