黒と白
移ろいゆく人の心に期待などしない。


それは余りにも残酷で悲しいことだから。


「綺麗な部屋やね」

ベットに腰をおろしたわたしに、涼くんはぎゅっと抱きついてきた。良い香り。涼くんの香りは好き。
彼からは育ちの良い香りがする。香水ともまた違う、彼自身が持っている香りだ。



「かわえぇな」

「ほんまに好きや」

「えぇ匂いする」

「純粋な杏樹が好きやで」



落ちてくる愛の言葉に

彼はわたしの体中にキスを落としながら、柔らかい愛撫をしていく。


犬顔。
一重、垂れ目。わたしとは全然違う顔。
笑うともっと優しい顔になって2本の八重歯が見えるのが特徴。



彼の指先だけでわたしはイきそうになって、ええでと合図を送る。


「あーごめん」


申し訳なさそうに項垂れる彼は
これで何回目だろう。


彼いわく、本気で好きになった相手とは緊張して出来なくなるらしい。


「ええで、大丈夫やって」


ならばわたしを抱けるようになったら、わたしを好きじゃなくなってしまうのだろうか。





愛が死んだ時

涼くんは躊躇いもなくわたしを抱くのだろうか。

愛が賞味期限つきの物だということをわたしは知っていたから。



いくらいまわたしを好きだと言ってくれていたって、明日には心変わりしてしまうかもしれないじゃないか。


永遠なんてない、って知ったのはいつの頃からだったろうか。


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