マネー・ドール -人生の午後-
家族の時間

(1)

 駅前では、新しいスポーツジムのクーポン券を配っていた。
 ホットヨガのスタジオがあるんだ……興味はあるんだけど、私、体かたいし……でも、一回行ってみよっかな。ほんとに、太ってきたし、これ以上はヤバイかもしんない。
 時計を見ると、まだ五時前。今日は慶太も遅いみたいだし、思った時に行ってみないと、もう、絶対行かないよね。
 何がいるんだろう。えーと、Tシャツと、スエットでいいのかな? ヨガウエアとかないし。配ってる人に聞いてみよう。
「あの、すみません……」
振り向いたのは、若いお兄さん。二十代前半かな? スポーツマンって感じ。
「行ってみたいんですけど、ウエアはどんなものを……」
「ありがとうございます! 普通のTシャツにパンツで大丈夫ですよ。汗をすごくかくので、吸収しやすいものがいいです。あと、タオルと、お水です。スタジオでレンタルもしてますので、手ぶらできていただいても大丈夫です」
 へえ、レンタルとかあるんだ。でも、他の人が着たウエアを着るのはちょっとね。
「体、かたいんですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。初心者用のプログラムは、誰でもこなせるようになってますから」
お兄さんの笑顔、すごく爽やか。おばさんは、この笑顔に惹かれて入会しちゃうのね!
「そうなんだ。じゃあ、頑張ってみます」
「お待ちしております!」
 こういうことができるのも、時間とお金に余裕があるからよね。慶太に感謝しなきゃ。

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