マネー・ドール -人生の午後-
「真純、ちょっと体調がね」
「さっき、休憩室でお会いしました」
「なんで!」
「電話をしたら、休憩室にいるというので」
田山は、何もかも知っている様子で、憎々しい目で俺を見る。
「で、今日は何?」
「海外に行くことになりまして」
「海外? どこ」
「イタリアです。新しい商業施設の建設計画がありましてね、日本人のプロデューサーを募集していて、めでたく採用されたんです」
なんだよ、すげえじゃねえか。
「デザイナーより、どうやらプロデューサーのほうが向いているようなので、この際、勉強のつもりで行こうかと。まあ、こちらの事務所のデザインさせていただいた結果ですから、お礼は言わせていただこうと思いまして、寄らせていただきました」
「そう……がんばって。どれくらい行くの」
「二年か、三年か。もしかしたら、向こうに移住して、日本と行ったり来たりかって、感じです」
イタリアか……こいつも、遠くへ行っちゃうんだ……それはそれで、ちょっと寂しいな。
「幸せになったと思ったのにな」
「誰が?」
「真純さんです。あんなに泣いて……心配だ」
相変わらず挑発的なヤツ!
「何か、言ってたか……」
「まったくね、俺には彼女の気持ちがさっぱりわかりませんよ。あなたのどこがいいのか、俺には理解できない」
「なんて……」
「慶太は悪くない、の一点張りです」
真純……
「佐倉さん、いい加減にしていただかないと、俺、本当に奪いますよ。俺は彼女のためなら全て投げだせます。何もかも失っても構わない。だけどね、彼女はあなたをなぜか愛している。彼女を傷つけることだけはしたくないから、俺はそうしないだけで、なのにあなたは……もう少し、真純さんを大切にしてください」
なんだよ……俺だって精一杯やってんだよ……俺の何が悪いんだよ……
「何もかも失うって、仕事とか、なくなってもいいってことか?」
「そうですね。それで失うような仕事はいらないです」
バカバカしい。独身だからそんなこと言えるんだよ。嫁さん食わせていくことほど、大変なことはねえんだよ!
「俺は真純のために働いてるんだ。お前にとやかく言われる筋合いはない」
「そうですか。せいぜい、がんばって働いてください。そして、金のために、真純さんを傷つけてください」
田山はそう言って、俺を睨みつけて、俺もヤツを睨みつけた。
ふん、と言って、田山は立ち上がり、ドアがバタンと音を立てて、猛スピードでプリウスは出て行った。
「さっき、休憩室でお会いしました」
「なんで!」
「電話をしたら、休憩室にいるというので」
田山は、何もかも知っている様子で、憎々しい目で俺を見る。
「で、今日は何?」
「海外に行くことになりまして」
「海外? どこ」
「イタリアです。新しい商業施設の建設計画がありましてね、日本人のプロデューサーを募集していて、めでたく採用されたんです」
なんだよ、すげえじゃねえか。
「デザイナーより、どうやらプロデューサーのほうが向いているようなので、この際、勉強のつもりで行こうかと。まあ、こちらの事務所のデザインさせていただいた結果ですから、お礼は言わせていただこうと思いまして、寄らせていただきました」
「そう……がんばって。どれくらい行くの」
「二年か、三年か。もしかしたら、向こうに移住して、日本と行ったり来たりかって、感じです」
イタリアか……こいつも、遠くへ行っちゃうんだ……それはそれで、ちょっと寂しいな。
「幸せになったと思ったのにな」
「誰が?」
「真純さんです。あんなに泣いて……心配だ」
相変わらず挑発的なヤツ!
「何か、言ってたか……」
「まったくね、俺には彼女の気持ちがさっぱりわかりませんよ。あなたのどこがいいのか、俺には理解できない」
「なんて……」
「慶太は悪くない、の一点張りです」
真純……
「佐倉さん、いい加減にしていただかないと、俺、本当に奪いますよ。俺は彼女のためなら全て投げだせます。何もかも失っても構わない。だけどね、彼女はあなたをなぜか愛している。彼女を傷つけることだけはしたくないから、俺はそうしないだけで、なのにあなたは……もう少し、真純さんを大切にしてください」
なんだよ……俺だって精一杯やってんだよ……俺の何が悪いんだよ……
「何もかも失うって、仕事とか、なくなってもいいってことか?」
「そうですね。それで失うような仕事はいらないです」
バカバカしい。独身だからそんなこと言えるんだよ。嫁さん食わせていくことほど、大変なことはねえんだよ!
「俺は真純のために働いてるんだ。お前にとやかく言われる筋合いはない」
「そうですか。せいぜい、がんばって働いてください。そして、金のために、真純さんを傷つけてください」
田山はそう言って、俺を睨みつけて、俺もヤツを睨みつけた。
ふん、と言って、田山は立ち上がり、ドアがバタンと音を立てて、猛スピードでプリウスは出て行った。