マネー・ドール -人生の午後-

(2)

「いらっしゃいませ」
 開店して、一ヶ月。やっと、お客さんも落ち着いてきた。
「遅くなってごめんな。これ、開店祝いや」
「なんだ、気使うなよ。さ、座って」
「へえ、なかなかいい店じゃん」
「だろ? 全部、真純のセンスだけど」

 私たちは、都心を離れて、郊外に引っ越して、山内会計事務所の近くで、小さなカフェレストランを始めた。
 私が料理を作って、慶太がお酒を出して……接客して。
 昼間は、工場や現場の職人さん達が、がっつりランチを食べてくれる。知美さんが体調のいい時はお手伝いに来てくれて、山内会計事務所のみんなも時々来てくれて、慶太はちょっとエラそうにしたりして。
 お昼を過ぎると、近所のママ軍団が現れて、お茶会開始。もうライバルじゃなくなったし、お友達も、少しできたかな。新米ママや、若い女の子達のミニお料理教室みたいな感じになって、楽しいの。
 夕方になると、学生さんがきて、勉強会という名の、慶太のナンパ教室になってる。もう、若い子に変なこと、教えないでよね! 
 夜は若いビジネスマンとか、カップルさん達が来てくれて、カウンターでデートしたり。ちょっと、うらやましいんだ。

「おすすめはね、ローストビーフ」
 今日は、中村くんと、将吾が来てくれたの。
「じゃあ、それにしよう」
 二人は、美味しいって食べてくれて、予想通り、三人は、テーブルで飲み始めてる。
「で、佐倉は何やってるわけ?」
「え? 俺? 俺はその……接客担当だよ」
「ほんまか? どうみても……真純しか働いとらん」
「そうだなぁ。お前、はっきり言って、ヒモじゃん!」
「おい! って……否めないかも……」
 なんて言ってるけど、資金繰りも、経営も、お金のことは、は全部慶太がやってくれてる。食材選びも、全部慶太。私は、ただ、好きな料理を作ってるだけ。
 それに、やっぱりイケメンだから、慶太目当ての奥様たちもいたりして。私はちょっと……チクチクするんだけど!
「真純もおいでよ。一緒に飲もうぜ」
「ダメだよ。私も飲んじゃったら、誰が運転するのよ?」
「しっかりした嫁さんがおって、佐倉は幸せやなあ」
「そ、俺、すっげー幸せなの。真純、愛してるよ!」
もう……なんなの? って、ちょっと、嬉しいじゃん。
「でも、なんか、雰囲気変わったなあ、お前」
「そうか?」
「セレブ感抜けて、昔のナンパな感じに戻ったな!」
「そ、そんなことないよ! 俺、今は、マジメだし!」
 うん? 何? 何、焦ってんの?
 中村くんと将吾は、焦る慶太に大笑いして、もう、なんか……楽しいんだ、私。
 
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