マネー・ドール -人生の午後-

(4)

「奥様、それでは失礼します」
森崎さんの声。もう、三時か……
「ご苦労さまでした」
 森崎さんを見送ると、急に気が抜けて、お腹が空いてたこと、思い出した。

 何か、あったかな……
戸棚には買いだめの菓子パン。さっきのアイスコーヒーを持ってきて、リビングで、テレビをつけた。
昔のドラマの再放送ね。ワイドショーより、よっぽどおもしろいかも。

 料理は好きだけど、あまり食べ物にこだわりはないんだよね。菓子パンだろうが、有名ベーカリーだろうが、実はどっちでも、いい。
慶太は、なにかとこだわりがあるみたいで、いろんなお店に連れてってくれるし、おいしいだろって、いろいろ買って来てくれるけど、ほんとは、イマイチわかんない。
 だって、私、食べることすら、ままならなかったんだもん。味なんて、わかるわけない。
 あー、こういうとこなのかな。慶太といると、なんか気が抜けないのは。
わかんないのに、わかったふりしなきゃいけない。
別に、しなくてもいいんだろうけど、慶太のがっかりした顔見たくないし、それに……見栄、かな……

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