心も体も、寒いなら抱いてやる
「だから早く行って待ってた」

ねむいな、と言うそばからふぁーっと大きなあくびをして、俊は車を発進した。

彼氏でもないし、いくら弟と昔仲が良かった友達だといっても迎えに来てもらう理由がない。

「なんで迎えにきてくれたの?」

「別に」

別に―――じゃないだろう。

寝坊すけの俊がこんなに朝早くに迎えにきてくれるなんて。

でもそれ以上、聞いても俊は「別に」とかいうだけなので、問い詰めるのはやめた。

「朝は通勤ラッシュですごい混んでるの。電車が揺れた拍子に何気なく触ってくる人もいるし。だからとっても嬉しかった。有難う」

俊は何も言わない。

最近、みのりはわかったことがある。

俊の沈黙は、怒ってるとき、機嫌が悪い時、関心がないとき、そして照れているときだ。

それからだいぶ間があいて「じゃあ、今日はコーヒーこぼすなよ」と、ぼそっと言いながら俊は少しアクセルを踏み込んだ。
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