心も体も、寒いなら抱いてやる
俊はみのりの体をそっと前にむけ、そして正面から体をそっと包み込んだ。

心細いほどに小さなみのり。

子どものように泣きじゃくるみのりの頭をなでる。

「みのり―――」

その先は心の中で囁いた。

以前は「このセリフ自体がさむい」とバカにしていたはずの言葉。

誰のことも思わず、空っぽの心で発信した言葉。


心も体も―――
寒いなら抱いてやる。

今はみのりを思い、何度も囁く。

抱いてやる、抱いてやる、抱いてやる。

心も体も―――

みのりのすべてを抱きしめてやる。
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