心も体も、寒いなら抱いてやる
「太一君、有難う」

静かなバリトンの声に太一は軽く頭を下げて、振り返らずに公園を走り去った。


「あれ、お父さんこんな朝からどこ行ってたの?」

「俊君と会っていた」

「俊と? なんで?」

「お前―――」
なんで今までだまっていたんだ、と問い詰めようとしてやめた。

気づかなかった自分の方にこそ責任がある。

俊の父は務めて穏やかに話し始めた。

「俊君が、お前がいると自分も殴られて迷惑だ。もううんざりだからお前をよそに転校させてくれって言っていたよ」

「そんなの本気じゃないよ!」

「当たり前だ。本気じゃないことくらい父さんだってわかっている。でも、太一君が俊のために精一杯考えて、お前に嫌われてもお前を救おうとしているんだ。このままじゃ本当に取り返しがつかないことになると、誰よりも太一君がお前の心配をしてくれてな。今まで気づいてやれなくて悪かったな。父さんも太一君の意見に賛成だ」

「太一だって殴られてるんだよ。それも僕のせいで。それなのに僕だけ逃げるなんて、太一を置き去りにするなんてできないよ……」

俊は自分のために殴られても、決して逃げずにいつだって俊を守ろうとする太一の姿を思って泣いた。


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