心も体も、寒いなら抱いてやる
「やめてよ!」

このみは右手で佐伯の頬をひっかく。昨晩、研いできたので彼の頬には赤く細い線が走った。

佐伯は顔をしかめて「お前、殺すぞ」とこのみの肩を持ち上げてから地面にたたきつけた。

後頭部に激しい衝撃を受けたが、地面は春の緩んだ土だ。大したことはない、が、大げさに痛いそぶりを作る。

「こいつ、やっちゃおうぜ」

「お前、スマホで撮影しろ」

そんなやり取りが交わされる中、佐伯の下でこのみはできるだけ暴れ、そのたびに肩をゆすぶられ、頬をはたかれ、そしてついに佐伯がブラウスを引きちぎった。

サーモンピンクのシャツがあらわになった時、「おい、何してるんだ!」という声が響き、お巡りさんが走ってきた。

どんぴしゃのタイミング。

佐伯たちは現行犯で連行された。

このみが佐伯に渡したノートの手紙はもみ合うさなかにポケットから抜き取り、お巡りさんを連れてきた友人に渡して始末した。

このみは警察で自分のこと以外に俊の事件、太一への暴行のほかに、他の友人から集めた彼らのこれまでの万引きや恐喝、動物虐待など様々な話を伝えた。

その後、佐伯たちは前科ありで拘留されたのち、鑑別所に送られた。

3人は退学。

たまに佐伯たちとつるんでいた学生たちもようやく静かになった。

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