心も体も、寒いなら抱いてやる
「はぁ……」

話を早く打ち切りたいが、なかなかタイミングがつかめずに愛想笑いをひたすら浮かべるみのりの後ろを、まるで影のようにすーっと俊が通って行った。

新田はその姿をわざと気づかないふりしてやりすごした。

着替えるだけにしては時間がかかっている。
新田からも遠ざかりたくて「ちょっと化粧室をのぞいてきます」と、みのりは小走りで化粧室に迎えにいった。

けれど俊の姿は見当たらず、マキさんも谷さんも帰り支度を整えて、まさに部屋を出ようとしていたところだった。

「あら、何か忘れ物?」

「あれ? ルカは……」

「やだ、もう出ていったわよ」

「え、」

みのりは踵を返し、スタッフ全員に「有難うございました。お疲れ様でした!」と声をかけて駐車場に走った。

車の鍵は俊が持っていた。

まさかと思ったが、アイスブルーのプリウスの姿はなかった。

「私、置いていかれた?」

俊に電話をかけてもドライブモードになっていて電話はつながらない。

何で? 

わたし、何か怒らせるようなことした?

みのりは駐車場に立ち尽くす。
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