琥珀の記憶 雨の痛み
「噂をすれば」
不意に耳に入ったナツの声で、正気に戻った。
無理だよ、駄目なんだよいくら望んだところで。
ナツを裏切りたくないのも、私の意思なのだから。
ナツを失う道など、選べるわけがない。
周りが少しざわついて、顔を上げるとナツが言った『噂をすれば』の意味をようやく理解した。
ユウくんが従業員出入り口から出てきたところだ。
声をかける周りを半分くらいは無視するような形で、マイペースに定位置に向かい早速腰を下ろす。
この天気で、多分今日も地面も壁もしっとりと濡れている。
だからか、その光景を初めて目にする彩乃ちゃんが口の中で小さな驚きの声を押し殺したのが聞こえた。
「あ、あの……人が、『態度もガタイもデカい』人ですか?」
おず、と小声で尋ねてきたその言葉に、思わず笑ってしまう。
さっきメグが言ったまんまだけど、彩乃ちゃんの口調やイメージにあまりにもそぐわない物言いが可笑しい。
しかも極めて真面目な顔で、むしろ脅えたような顔で言うから尚更。
「うん、紹介するね。……最初が肝心よ。私みたいにナメられたらずっと意地悪されるからね!」
冗談めかしてわざと脅す様な事を言うと、彩乃ちゃんの返事は「ひゃいっ!」と声がひっくり返る。
近くにいたナツが大袈裟にコロコロと笑って、彩乃ちゃんの強張った表情もそれで少しだけほぐれた。
不意に耳に入ったナツの声で、正気に戻った。
無理だよ、駄目なんだよいくら望んだところで。
ナツを裏切りたくないのも、私の意思なのだから。
ナツを失う道など、選べるわけがない。
周りが少しざわついて、顔を上げるとナツが言った『噂をすれば』の意味をようやく理解した。
ユウくんが従業員出入り口から出てきたところだ。
声をかける周りを半分くらいは無視するような形で、マイペースに定位置に向かい早速腰を下ろす。
この天気で、多分今日も地面も壁もしっとりと濡れている。
だからか、その光景を初めて目にする彩乃ちゃんが口の中で小さな驚きの声を押し殺したのが聞こえた。
「あ、あの……人が、『態度もガタイもデカい』人ですか?」
おず、と小声で尋ねてきたその言葉に、思わず笑ってしまう。
さっきメグが言ったまんまだけど、彩乃ちゃんの口調やイメージにあまりにもそぐわない物言いが可笑しい。
しかも極めて真面目な顔で、むしろ脅えたような顔で言うから尚更。
「うん、紹介するね。……最初が肝心よ。私みたいにナメられたらずっと意地悪されるからね!」
冗談めかしてわざと脅す様な事を言うと、彩乃ちゃんの返事は「ひゃいっ!」と声がひっくり返る。
近くにいたナツが大袈裟にコロコロと笑って、彩乃ちゃんの強張った表情もそれで少しだけほぐれた。