琥珀の記憶 雨の痛み
「ユウがバスケ? なんか想像出来ないな」

と、尚吾くんは目を丸くしている。


「私も全然気付いてなかったの。なんか同一人物には見えないし、名倉祐仁は当然高校でもバスケ続けてるって思ってたし」

最初の食い付きが思いの外良かったから、私はちょっと興奮して喋ってしまった。
だけど何だか、途中から彼の顔は少し曇ったようにも見える。


「あの……どうかした?」

と、恐る恐る窺うと。

「莉緒、ユウとは違う中学だよな? 学年も違うし。そんっなに良く覚えてんだ、『名倉祐仁』のこと」

何故か少し不満そうな顔して、尚吾くんはそう言った。


「え……むしろ忘れてたんだけど。ケイなんか、バイト先で再会した時にすぐ気付いたらしいのに」

「気付かなかったのは、ユウが中学の時と印象変わってたからだろ。単なる他校の先輩にしちゃ、随分良く覚えてるみたいじゃん当時のこと」


少しずつ早口になっていく喋り方が、なんだかすごくイライラしているようで。
責められてるみたいな口調が、怖かった。

私、何か怒らせるようなこと言った?
そうストレートに聞いて良いものかどうか、迷った。

せっかく久しぶりに2人で歩いているのに。
何で、楽しめないんだろう。
こんなのイヤだ。


何で怒ってるのか、ちゃんと聞こう。
彼が嫌ならこの話題は終わればいい。
ていうか、そもそもユウくんの話をする必要なんかないんだから!

そう思い切って顔を上げると、じっとこっちを見つめている彼と目が合った。
見たことないような冷たい視線に刺されて、動けなくなる。


「憧れてたりしたわけ? 名倉祐仁に」
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