琥珀の記憶 雨の痛み
「ごめん莉緒、なんか意地悪いこと言って」
「……え?」
国道をくぐる地下道は、原付は通れなくて。
歩行者にはあんまり優しくない信号が変わるのを、並んでのんびり待ってる。
行き交う車が湿った路面を蹴る音は晴れた日とも大雨の日とも少し違って、霧で滲んだ車のライトも信号の赤も、なんだかやけに幻想的だった。
「俺、ちょっと嫉妬したのかも」
「――あ、はは」
脈打つ心臓が、痛くて。
尚吾くんの顔は見れない。
青に変わった信号は赤よりも少しぼやけて、誰かの涙、みたいだった。
「前はあんなに怖がってたのにな、ユウのこと。今は全然平気そうなのは、アイツが『名倉祐仁』だったから?」
質問に、少し首を傾げた。
それだけではない、と思う。
理解出来ないから、怖かった。
分かってしまえば、怖くはない。
尚吾くんとナツを避けるためにユウくんと一緒にいる時間が増えたのは確かで、だから私は、彼のことが少しは分かるようになったのだと思うけど。
でもきっかけは――。
「尚吾くんが、言ってくれたから。ユウくんに対する苦手意識、取っ払ってみてって……認めるところは認めて欲しいって。だから……知ってみようと、思った」
国道を渡り終えたところで、彼は立ち止った。
え、と思って、見上げる。
それから気付いた、彼の名前を口にしていたことに。
「そっか……俺か」
尚吾くんは笑っているのに、なんでか泣いているように見えた。
ちょうど彼の頭の向こうに、点滅する青が滲んでいたから、なのかもしれないけれど。
「……え?」
国道をくぐる地下道は、原付は通れなくて。
歩行者にはあんまり優しくない信号が変わるのを、並んでのんびり待ってる。
行き交う車が湿った路面を蹴る音は晴れた日とも大雨の日とも少し違って、霧で滲んだ車のライトも信号の赤も、なんだかやけに幻想的だった。
「俺、ちょっと嫉妬したのかも」
「――あ、はは」
脈打つ心臓が、痛くて。
尚吾くんの顔は見れない。
青に変わった信号は赤よりも少しぼやけて、誰かの涙、みたいだった。
「前はあんなに怖がってたのにな、ユウのこと。今は全然平気そうなのは、アイツが『名倉祐仁』だったから?」
質問に、少し首を傾げた。
それだけではない、と思う。
理解出来ないから、怖かった。
分かってしまえば、怖くはない。
尚吾くんとナツを避けるためにユウくんと一緒にいる時間が増えたのは確かで、だから私は、彼のことが少しは分かるようになったのだと思うけど。
でもきっかけは――。
「尚吾くんが、言ってくれたから。ユウくんに対する苦手意識、取っ払ってみてって……認めるところは認めて欲しいって。だから……知ってみようと、思った」
国道を渡り終えたところで、彼は立ち止った。
え、と思って、見上げる。
それから気付いた、彼の名前を口にしていたことに。
「そっか……俺か」
尚吾くんは笑っているのに、なんでか泣いているように見えた。
ちょうど彼の頭の向こうに、点滅する青が滲んでいたから、なのかもしれないけれど。