琥珀の記憶 雨の痛み
今私が喜び過ぎたら母は、今日揚げたてを出した自分を褒めるのではなく、今まで揚げたてを出してこなかった自分を責める。

根本原因まで突き詰めて考えて、父親がいないことを――離婚した過去を責める。

そういう人だ。

真面目すぎて。
周りではなく、全部自分のせいにする。


もしかしたら突き詰めすぎて、私を産んだことも後悔したことが、母にはあるのかも知れない。
そこまでは、考えたくもなかった。


滲み付いている。
母のそういった性質が、私にも。
多分、よく似ている……悪い意味で。

自分でもそれを、たまに感じる。


「うん、美味しい」


揚げたての春巻きは、いつもよりも美味しかった。
パリパリの皮が唇の端を攻撃するみたいに刺さった。

母が私にくれる、精一杯の優しさと愛と――、そして、隠し切れない痛みの味がした。


母はダイニングテーブルの向かいに座ったまま、じっと黙って私の食事の様子を眺めていた。
話をするつもりで向き合ったのに切り出しにくいのか、私が食べ終わるのを待っているのか。


「お父さんが、どうかしたの?」

居たたまれなくなって先に話に触れたのは、私の方だった。

母は気遣うような視線を寄越した。


『食べ終わってからでいいのよ』と言われた気がしたけれど、私は箸を止めないことで、『気にしないから大丈夫』と伝えたつもり。
こういう無言の会話は、母娘だから成立するのかもしれない。

母は、静かに話し始めた。
< 217 / 330 >

この作品をシェア

pagetop