琥珀の記憶 雨の痛み
「ちょっと、なんでそんな顔してるの」

と、母が苦笑した。
そんな顔と言われても、どんな顔してるんだか自分では分からない。

「可愛いでしょ」

きっと泣きそうなのを我慢して、不細工な顔だ。
そう思ったからわざと、言ったのに。

「そりゃ、お母さんの娘だもの」

「……」

お母さんって、こんな人だったっけ。


「馬鹿ね。自分の娘が可愛くない母親がどこにいるの」

目を細めたお母さんが、ぽんと頭に手を乗せて。
泣きそうなのがバレるのも承知で、私は鼻を啜った。


完璧じゃなかったら、愛してもらえないと思ってた。
お父さんが私を置いて出て行った、みたいに。


ちゃんとしてなかったら。
勉強も部活も、生活態度も、友達関係だって、全部。
ただ頑張ってるだけじゃ駄目だと。
100点満点取り続けてないと、いつか捨てられちゃうかもって。

それが怖くて、ずっと必死で。

でもいつからか疲れて。
頑張っても100点なんか取れなくて。
嫌になって――、逃げて。

適当な理由を付けて部活を辞めた。
多分あれが、小さな抵抗の始まりだった。

バイトを始めて、新しい世界を見て。
性懲りもなくそこでも頑張ろうとする私に母は否定的で、なんだか……これが反抗期、というやつだったのか。

このところずっと、母とは真っ直ぐに向き合えていなかった気がする。
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