琥珀の記憶 雨の痛み
母の誤解は確かに甚だしかった。
けど、思いもよらぬ方向から、私が危惧していたことをズバリと指摘した。


「だってあのジャージ、煙草の匂いが滲み付いてるみたいだったから……大人の人なんでしょう」


――ユウくんは、高校生ではない。
確かに1つ、年上だ。
けど、母が思っている『大人』では、ない。


バイト仲間の高校生のほとんどが煙草を吸ってる。
それを知ったら、きっと母はバイトを辞めろって言い出すに違いない、と。

初めてみんなが私の前で煙草を吸った日からずっと、心配は、していた。


「大人……っ、うん、年上の、先輩。煙草吸ってるわ、確かに」

ギリギリ嘘ではない。
実際には彼以外の同い年の仲間たちも、煙草吸ってるんだけど。


「服とタオルと貸してもらうなんて、お家にお邪魔でもした? だからお母さん、それなりに親密な仲なのかと……」

「違うよ、通り道なの、家が。あ、それも今日知ったんだけど……」

今のは嘘だ。
近いけれど、通り道ではなかった。

さっき私に嘘が下手だと言った母は、気付くだろうか。
でも気付かれて困るのは、彼の家の場所ではない。

ユウくんの年齢。
そして、他にも未成年なのに煙草吸ってる友達がわらわらいるという事実。


気が付いたら、バレちゃまずいことを隠すために、バレても良いことを必要以上に喋っていた。
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