琥珀の記憶 雨の痛み
「待ってってば! 一体誰の話して――」

いよいよ母の暴走がワケ分からなくなってきて、さすがに堪らずに割って入った。


きょとんとした母が投下した爆弾は、

「誰って、赤いジャージの彼。隠さなくたっていいわよ、送ってもらったんでしょ?」

……誤爆も甚だしい!
何故、私の相手がユウくん!!


「ジャージの人はただのバイト友達ー!!」

思わず全力の大声で否定すると、漸く母のマシンガンが止まった。

しばらくポカンと固まっていた母が次に口にした言葉は、

「……なあんだ、残念」

デジャウみたいに、ついさっきの自分の感情とリンクした。

母と父の結婚をお膳立てしたという上司さんと、母との間には何もなかったのが『残念』……。


ん? あれ?
なんだかんだ言いつつも、私と尚吾くんの仲が上手くいくよう背中を押してくれたユウくん――。

微妙にシンクロしていることに気付いて、少しだけ興奮した。
何も知らないはずの母が、やけに意味ありげに『残念』と口にしたから余計に。


私が『残念』と言った時には母がお腹をよじって笑い飛ばしたのと同様に、ユウくんと何もないことは、私にとっては別に『残念』でも何でもない笑い事だけど。


「と、ところで」

咳払いで取り繕いながら、ふと気になった点を尋ねた。

「なんでジャージの人が年上だって分かったの?」


むしろバイト先では、ひとくくりで同年代というグループだ。
ユウくんは確かに1つ上ではあるけど、普段からあまり、そういうつもりでは接してないんだけど。
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