臆病者の鬼遊び
安請け合いしたはいいが、なんと渡された本はずっしりと重く、
しかも上下巻で、しかも難解な言葉遣いが、ぎっしりみっちりどのページも埋め尽しているではないか。
これは、夏休み中に読み終わらないかもしれない……!
危機を感じた七海子は、律儀に今から読み進めているのであった。
「なーみこ、おはよう!」
七海子の前の席の万知子(通称まっち)が、椅子を引きながら、七海子の肩をぽんと軽く叩いた。
すると、七海子は一瞬びくりと体を震わせ、
のろのろと起き上がり、寝ぼけたように一言「ごにゃおう……」と呟いた。
「なに鳴いてんの」
「え、今『おはよう』って言ったよ」
「滑舌悪っ!」
笑いながら、まっちが七海子の頭をくしゃくしゃ! と勢い良く撫でた。
七海子が悲鳴を上げて抵抗するが、今朝頑張って整えてきた髪型は、
汗とまっちによりめちゃくちゃにされてしまった。