黒太子エドワード~一途な想い

結婚してくれるまで動かない

「そういうロマンティックな言葉など、未だに苦手で申し訳ないが、君への気持ちは変わらない。これからも、この先も、ずっと。だから、私の妻になってくれないか?」
「エドワード……」
 これには、流石のジョアンも目を丸くした。
「気持ちは凄く嬉しいわ。でも、今やあなたはイングランドの王太子。フランスでも何度も敵を破る大活躍をしていると聞いているわ。そんな人が、結婚歴もあって、子供だっている女と結婚出来ると思う?」
「再婚している王など、いくらでもいるだろう!」
「確かに、前の王妃様が亡くなられて、再婚している人ならいるでしょう。確か、今の国王陛下のおじいさまのエドワード1世殿下もそうよね? だけど、結婚相手が再婚で、本人が初婚という方は、未だにおられないはず。きっと周囲の方も反対するわよ?」
「それはそうかもしれんが、私は君以外の女性と結婚する気など、無いぞ! 君が承諾してくれるまで、ここも動かぬしな!」
「え、エドワード……?」
 これには、ジョアンも再び目を丸くした。
「まさか、本当に此処を動かない気なの?」
「無論だ!」
 そう答える黒太子は、ひざまずいたままだった。
「……しょうがないわね……。まったくもう、一度言い出したら、人の話なんて、聞かないんだから!」
 ジョアンが苦笑しながらそう言うと、彼はひざまずいたまま、彼女を見た。
「じゃあ、ジョアン……」
「話は、ちゃんと聞くわ。だから、立って。お願い!」
 そう言うと、彼女は彼を立たせようと腕をひっぱったが、彼は首を横に振って動かなかった。
「ダメだ! まだ言うことがある!」
「まだ何かあるの?」
 目を丸くするジョアンの手を両手でしっかり握ると、黒太子はひざまずいたまま、真っ直ぐ彼女を見つめた。
「ジョアン・オブ・ケント、君と子供達のことは、私がこの命に代えても守ると誓う。今までの愛も、これから死ぬまでの愛も、全て君一人だけに捧げると誓う。私の愛は、この先もずっと、死ぬまで世界でただ一人、君だけのものだ。だから……だから、私の妻となってくれないか?」
「エドワード……」
 目の前の幼馴染の名を呟くジョアンの目には、いつしか涙が溜まってきていた。
「ジョアン、私はそんなに君を驚かせたか?」
 そんな彼女の反応に驚いて、黒太子はそう尋ねたが、それでもそこを動こうとはしなかった。
「そうね……。驚きもしたけれど、半分は嬉しかったのよ。そんな口説き文句なんて言えないと思っていた人が、ちゃんと熱い想いを口にしてくれたから……」
「じゃあ……」
 黒太子が目を輝かせると、ジョアンは頷いた。
「答えは、YESよ。不器用な幼馴染が懸命に想いを口にしてくれたというのに、NOなんて言えないわ」
 ジョアンのその言葉に、黒太子は顔を赤くしながら、ゆっくり立ち上がった。
 ずっとひざまずいていたので足が痺れたのか、少しふらついたが、それをジョアンが支えた。
「もう、あんなにずっとひざまずいていたからよ!」
「それで君が私の妻となってくれるんだ。安いものさ!」
「もう、そういうことは、もっと前に言ってくれればよかったのに!」
「いいじゃないか。君は私の妻になってくれると決まったんだし」
「それは、そうだけど……」
 ジョアンがまた何か言いかけようとするのを、黒太子は彼女を抱きしめることで止めさせた。
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