黒太子エドワード~一途な想い
5章 ポワティエの戦い

ソールズベリー伯夫人の結婚の無効

 1347年8月3日にカレーが落ちてから、教皇クレメンス6世の仲裁による、1355年までの休戦協定が結ばれる。
 その間、黒太子エドワードに関係することといえば、1349年のソールズベリー伯とジョアン・オブ・ケントの結婚の無効だった。

「フン……」
 懐かしい筆跡とケント伯の封蝋を見ても、黒太子は開けずにその手紙を捨てようとした。
「殿下! そのまま捨ててしまって、宜しいのですか? せめて、開けて、内容を確認された方が宜しいのでは?」
 それをジョン・チャンドスが手首を掴んで止め、そう言った。
「どうせ、弟ジョンの様態が思わしくないので、夫にケント伯を継がせたいという話だろう。そんな手紙、わざわざ読まずともよいわ!」
「それだけとは限りますまい。せめて、念のために確かめてみられては?」
「だが……!」
「殿下、ペストの流行も下火になってきたとはいえ、この世の中では、いつ何が起こるか分かりません。大事な方からの手紙は、置いておかれるに限りますぞ!」
 そのチャンドスの言葉に、黒太子の表情は曇った。
「だが、あいつは私のことなど、何とも思っては……」
「今はそうかもしれませんが、この先、どうなるかまでは分かりませんぞ」
「チャンドス……? それは、つまり、まだ私にも可能性があるということか?」
 その言葉に、暗かった黒太子の表情が、パッと明るくなった。
「無いとは申しません。人生、この先どうなるかは、神のみぞ知る、ですからな。それに、殿下がジョアン姫からの手紙を燃やされたなどとどこかでお聞きになられたら、王妃様が悲しまれましょう」
「母上か……」
 その言葉に、黒太子は苦笑した。
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