黒太子エドワード~一途な想い

初めての……

 元々、家系的に彫りが深い顔立ちで、しかも目鼻立ちも整っている上、城の管理をしていた為、色白であったティファーヌは、30を過ぎていても、美しかった。
 しかも、そんな「美人」が自分に夢中だというのである。娼婦としか遊んだことのなかったベルトランは、まぶしくて、胸が締め付けられる思いもした。
「ベルトラン……?」
 お酒はたしなむ程度に飲むものの、決して呑まれることのない彼女の声は、これまた澄んで綺麗な声であった。
 そんな声で、自分を黙って見つめている大男の名を呼びながら、上目づかいで彼を見ると、彼はいきなり、彼女を抱きかかえた。
「べ、ベルトラン?」
 ティファーヌが驚いて、その腕の中でそう尋ねると、彼は首を横に振った。
「そんな綺麗な顔と声で、一途な想いを囁かれて、何もせずに帰れるわけがねぇだろ! 結婚式は後日、ちゃんと挙げるが、初夜は今日でいいよな?」
「綺麗……? 私が……?」
 若い頃は何度か言われ、小さいながらも城と領地を持っていたこともあり、求婚者が何人も来たこともあったあ、最近はそういうこともなくなっていた。
 だから、自信を失っていたのだが、大好きなベルトランにそう言ってもらい、ティファーヌは嬉しさで頬を紅潮させた。
「なぁ、いいよな?」
 だが、ベルトランは違うことに夢中だったようで、少しいらつきながらそう尋ねた。
「え、ええ……」
 頬を赤らめながらティファーヌがそう返事をすると、ベルトランは頷き、大股でホール中央の大きな階段を上って行った。勿論、ティファーヌを抱きあげたままで。

「お嬢様、もうお昼でございますよ。流石にこの時間までお休みというのは……あれまぁ!」
 翌朝というより昼前、ずっと仕えてきたメイドのアンヌがそう言いながらカーテンを開けると、ベルトランとティファーヌが仲睦まじく抱き合ったまま横になっていて、目を見張った。
「あらあら! 今日は特別、美味しい物をご用意せねばなりませんね!」
 アンヌがニヤニヤしながらそう言い、部屋を後にするのを見ながら、ティファーヌは隣のベルトランの胸毛を触った。髪の毛と同じ、少し濃い目の薄い金色の怪我、そこにはびっしり生えていた。
「こんなに幸せなのね……。ただ、隣に居てくれるだけで……」
 心の底から幸せだという表情で彼女がそう呟いても、彼はまだ気持ちよさそうに寝息をたてていた。
「ふふ……。ゆっくり休んでらして」
 その様子を見てティファーヌがそう呟き、微笑んだ時だった。下で呼び鈴が鳴ったのは。
「まぁ、こんな時に誰かしら?」
 そう言いながら彼女が窓から外を覗くと、見覚えのある馬がいた。
「まさか、オリヴィエ?」
 そう呟くと、ティファーヌは傍に掛けていたガウンを羽織り、階下に向かった。
 それでもまだ、ベルトランは気持ちよさそうに眠っていた。
< 97 / 132 >

この作品をシェア

pagetop