LOZELO



「優奈ちゃんは将来看護婦さんになって、先生のお手伝いするんだもんな」


神崎先生の言葉に力強く頷いた優奈ちゃん。

優奈ちゃんの優しさなら、きっと患者さんに届く。

医者よりも患者の心のそばにいる立場は、きっと優奈ちゃんに似合っているだろうと思った。

対して医者は病気的な観点から支えてあげられる存在。

自分がそうなれたらと、ふと思った。

病気を身をもって経験した私が、医者になれたらと。

この体で一日中、診察に検査にと駆け回っていられるだろうか。

医学部なんて今の成績じゃ無理だし、大学に通うために先立つ資金もない。

結局、今までと同じ。やりたいことはできなくて当たり前。


「黒川さん、具合でも悪い?」


江口先生の言葉で我に返って、首を横に振る。

そういえば江口先生は、どうやって大学に通ったんだろう。

両親の離婚後、母親に引き取られたと言っていたし。

大学に行かせられるくらい裕福だったと言われたらそれまでだけれど、正直いいところのお坊ちゃんには見えない。

でも聞く勇気がなくて。

病室を立ち去る背中を、静かに見守ることしかできなかった。
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