四神転送


「ったく、かーちゃんが折角早起きして作った飯が冷めちまったらどうすんだよ」

「カップラーメン片手によく言うよ……」


ブツブツと文句を言いながらも、少年―弾―はラーメンへと手をのばす。


「弾、トーチャンにちゃんと"いただきます"って言えよ」


母親の視線の先には、額に飾られた笑顔の父親。
父親の前にはお著簿程度のラーメンが置かれている。


「とーちゃん、とーちゃんも好き嫌いせずにちゃんと食えよ?」

「トーチャンもお前に似て好き嫌い多かったからなぁ」

「……いただきます」


"俺がとーちゃんに似たんだよ"
と言うツッコミを胸に残し、少し冷めたラーメンを口に運んだ。


弾の父親は、弾がまだ小学3年の頃に炎に包まれて亡くなった。
弾と同じ歳の子供を助ける為に、誰もが救出不可能と判断した炎の中に身を投げ出した。

結果。子供を助ける事は出来たが、弾の父親は全身の70%が無惨に焼けただれ…病院に着く前に事切れて殉職。


父親は、消防士だった。



「トーチャン、毎朝飽きもせずに叫んでたねぇ。"死ぬ気で助ける、死んでも助ける"って…ホントに言葉通り、死んでも子供を助けてたよ」

「………ふーん。ごちそうさま!いってきます!」


残りのラーメンをかき込むと、適当に身支度をして家を飛び出した。




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