四神転送
見た目不良のヘラヘラ関西人、菅原謳花[すがはらおうか]は、自他共に認める演劇マニア。
演劇マニア魂は観るだけでは止まらず…「俺もいつか舞台に立つんやぁ!!」と奇声を発しながら大阪の実家を飛び出し、最も劇団の多い東京にやって来た転入生だ。
勿論、演劇部に所属。
その有り余る情熱と意外に繊細な表現力で、2年だと言うのに部長にまで上り詰めた実力派だ。
「ちょっ弾、ちゃんと聞いてるか?今からがまた凄い話の展開やのに」
「聞いてる聞いてる!ははっ、そりゃそれだけ熱中すれば親も反対できねぇよな」
「あー………せやな。」
「……謳花?」
先程とは打って変わった静かな対応に、思わず問いかけるように名前を呼ぶ。
だが、それに気付いてか気付かずか…謳花はそれ以上は語ろうとしなかった。
(……謳花の両親、か。)
今年の春に転入してきて約半年。
弾と謳花にとってはお互い3年分くらい凝縮されたような付き合いだが、それでも未だかつて謳花の口から親の話を聞いた事がない。
大阪のどこに住んでいたのかも、
家族構成も、
両親の職業も、
どんな風に育ったのかも…
解らないから仲良くないと言う訳ではないが、やはり寂しく思う気持ちも無いわけではない。
「なぁ、お前さ、今一人暮らしなんだろ?」
「せやけど……夜這いは勘弁してや?」
「バカかお前。ちげーよ、家賃とかどうしてるのか気になってさ」
「家賃はまぁ…―――あっ。」
「あ?」
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