あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─


家に引き籠りだして迎えたはじめての春。

少しずつだったけれど、心の均衡が取れるようになり、ようやく学校へと、あいつ等と顔を合わせようと気持ちを新たにした季節。


「………親父?」


じくりと胃に痛みが走った。

村の行事で早朝から家を留守にしていた親父の、普段は厳重に鍵が掛けてある書斎。その書斎の扉がほんの少しだけ開いていた。

止めろ、止めとけよ。祭りの時だって〝そう〟だったじゃないか。どうせろくじゃない。学習しろ。また傷付くのは自分だぞ。


「っ、」


それでも進む足は、殆ど入ったことのない部屋へと自分の影を落とす。ぐるりと眺めたところで別段変わった箇所はない。小難しい本に分厚い辞書、村の資料。でも、俺は見つけてしまった。


「携帯…?」


それは、とうの昔に解約していたはずの親父が数年前まで使っていたガラケー。アイツがこんなものを記念にわざわざ(・・・・)とっておくタイプの人間ではないことを誰よりも〝俺が〟一番よく知っている。


(駄目だ、止めろ、)
 
< 109 / 173 >

この作品をシェア

pagetop