身長差43センチのふたり。
「ち…ひろ、――くん。」
数十秒かかってやっと呼べた名前。
『"くん"はいらないんだけどなー?』
「っ、呼び捨ては…ちょっと、」
『照れてるの?』
「っ……!」
好きな人の名前を呼ぶことがこんなに難しいなんて。
今は、くん付けで精いっぱいだ。それなのに、それの上をいく呼び捨てなんて、今の私にはハードルが高すぎる。
どうしてもダメだと赤い顔と潤んだ瞳で訴えると、優しい高遠くんは折れてくれた。
『くん付けでいいから、下の名前で呼んでね。』
「う、うん…っ」
せ、精一杯善処させていただきます。
私の頭をポンポンとしてくれる千尋くんの隣で、私はちょっと頷いて見せた。