身長差43センチのふたり。
何で、島津さんが…?
千尋くんはどうしたの――?
『"千尋"はまだ図書室よ。』
「っ!!」
誇張して"千尋"と呼ぶ島津さんは、薄い唇を満足そうに釣り上げてこちらを見ている。
ここで話してた時は、"高遠"って呼んでたのに――っ…
『まだかかるから、もう帰れって、千尋が。』
「千尋くんが…?」
『そうだって言ってんじゃん。』
バカにしたように笑われる。
何で、いきなり?一緒に帰るって約束したのに?
『千尋に頼まれて、鞄取りに来ただけだから。』
「……っ」
出入り口に立ったままだった島津さんが教室の中に入ってきて、千尋くんの鞄を掴む。
机に広げっぱなしだった千尋くんの英語のテキストもノートも、島津さんの白くてしなやかな手で回収されていった。