身長差43センチのふたり。
『さっさと帰れば?』
千尋くんの鞄を自分のもののように肩にかけて、私を見下ろす島津さんの瞳はとても冷たくて、直視できずに俯いてしまう。
…なんだか怖い、この人。
いつも可愛らしい笑顔を周りに振り撒いている島津さんの姿は、どこにもなかった。
『あーあ、千尋が可哀想。』
上から降ってくる棘のような言葉が、ダイレクトに私の心に刺さっていく。
『アンタなんか、ただ背が小さいだけなのに、こんなののどこがいいの?千尋も、小さくて可愛"らしく"見えるから付き合ってるだけ。アンタなんて…本当に好きって思うわけないじゃん。』
「……っ」
島津さんに言われてるだけなのに、なんでこんなに傷つくんだろう。
千尋くんに直接言われたわけじゃないのに、なんでこんなに苦しくなるんだろう。
私達のこと何も知らないくせに、って思ってるのに、なんで泣きそうになってるの…っ?
『アンタより、私の方が千尋のことは良く知ってんの。どうせ千尋に飽きられて終わりになるんだから、もう別れたら?』
「―――っっ」
何も言い返すこともできずに息を飲み込む私に、これが最後とでもいうように冷酷な言葉を並べた島津さんは、颯爽と教室を後にした。