身長差43センチのふたり。



島津さんがいなくなった教室で。

タラリ、と抑え込むことができなくなった涙は頬を伝って、真っ黒なノートにシミを作った。


「っ……」


心がグチャグチャにかき回されて、赤く泣いてる。

こらえきれない涙を流す私は、声を押し殺すことしかできなかった。


――何も言えなかった。

違うって言えなかった。やめてって、島津さんの話を止めることくらいできたはずなのに、それすらもできなかった。


ポタリ、ポタリ、と真っ黒なノートの上で1つのシミが大きくなっていく。

空っぽの隣の席。

数時間前までは、あんなに幸せを感じていたのに。


「ふ……っ」


零れそうになる声を、両手を口に当てて抑える。

ダメ。ここで泣いたらダメ。誰が来るかわからない。

唇を精一杯噛みながら、震える手で帰りの支度を始めた。



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