身長差43センチのふたり。
――あれから、どうやって帰ってきたのかなんて分からない。
空っぽの頭と心でたどり着いた家は誰もいなかった。
パタン――ッ
「う…っっ」
自分の部屋に入った途端、全身の力が抜けて、部屋の扉に背をつけてズルズルと床に座り込んだ。
誰もいなくて良かった。
嗚咽交じりの声なんて、お母さんにもお兄ちゃんにも聞かれたくない。
――どうしてこんなことになったんだろう。
数十分前に必死に頭に入れ込んだはずの英単語なんて、もう頭の中からかき消されている。
千尋くん、千尋くん、千尋くん――…っ
私の心が叫んでる。
千尋くんを求めてる。
でも…、今、千尋くんの隣で笑っているのは――…島津さん、なんだよね?
そう思ったら、一際大粒の涙が濡れた頬を伝っていった。
千尋くんのこと信じてたはずのに…こんなに脆く、その自信も崩れていくなんて。
千尋くんが言ってくれた"好き"の声が、なぜか思い出せなかった。