飼い猫と、番犬。【完結】
舌打ちをしながら抱き上げた体はやはり反応がなく、だらりと頭を胸に預けてくる。
また一つ、眉間に皺が寄る。
こんなのは沖田じゃない。
こいつは跳ねっ返りのじゃじゃ馬だから面白いのだ。
「どうするつもりだ」
「ちょい借りてくだけや。どうせこんまま此処に置いてたかて色々と都合も悪いやろ。まぁ悪いようにはせんさかい」
俺は医者じゃない。こんな風になった人間を相手にするのも初めて。だが一先ず此処は離れた方が良いと思う。
今のこれにとってはあまりいたくはない場所だろうから。
「総司はっ」
スタスタと部屋から出ていこうとする俺の肩を、慌てた様子の副長が掴む。
流石に沖田の様子が気になるのだろう、その目にいつもの冷静さは見当たらない。
けれど正直、今更だ。
「俺は、上役としての今回の判断は妥当やと思う、ただこれが弱かっただけや。せやけど鬼になるて決めたんやったら変な情は見せたらあかんで。それはもう自分の役目やない」
後戻りする気がないなら情けは無用。中途半端にズルズルいけば今後も必ず支障が出るだろう。
それはこれにとっても辛いことになる。
ならいっそこのまま──
そう思うのは俺の勝手なのだろうか。
「……ともかく今はそっとしとってやり」
少しばかり苛々した私情が混じったであろう言葉にそう付け加えると、ゆるりと手が離される。
幸い外はもう暗い、人目は然程気にしなくても大丈夫だろう。
返事がないのを了承とし、俺は人形と化した沖田を連れて屯所の裏門を潜った。